ヴォーリズ建築の会堂– Architecture of William Merrell Vories –

教会の建物は、初期の信者の募金活動と、ドイツ改革派教会の宣教師からの援助によって、1933年に建てられました。設計したのは、アメリカ人の信徒伝道者で1905年に来日し、生涯にわたって日本で建築家、実業家として多くの仕事をしたW・M・ヴォーリズ(1880ー1964)です。
竣工以来、基本的な外観、内観、おもな調度品類は昔からの姿を残したまま、床の張り替え、幼稚園舎の増築、耐震補強、ステンドグラスの修理などの改修工事が幾度か行われました。

建物は東京メトロ広尾駅徒歩3分の有栖川宮公園の脇、南部坂の途中に位置しています。一階のホール(幼稚園)と礼拝堂を重層的に積み上げることによって、坂道という立地条件を活かした設計がされています。

白い外観は、石造りなのではと思わせる洋風の雰囲気を醸し出しています。しかしながら、一歩、礼拝堂に足を踏み入れると、暖かい開放的な木造建築の空間が広がっています。

前方
後方

特徴的なのは天井部分の木造によるトラス構造※1。
この構造形式により、2階席もある礼拝堂内部に柱を無くした2層吹き抜けの大空間を実現しています。

またトラス構造が構造的な役割だけではなく、意匠的にも美しく、宗教建築としての静謐な空間を作ることに大きな役割を果たしています。

※1 トラス構造・・・部材を三角形を基本単位とする構成でつなぎ合わせた構造形式。

内装のディテールや家具などに細かい装飾が施されています。

教壇
サイドテーブル
ステンドグラス
教壇の壁
二階席の手すり

各ディテールをご覧になって、共通のデザインがあることにお気づきになられましたでしょうか。

それぞれ菱形のような形に、縦のラインが伸びているオブジェクトが用いられています。これは麦の穂をイメージしてデザインしたと伝えられています。

聖書の中でイエス・キリストは、「一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば、多くの実を結ぶ。」と語られました。これは、「わたしが遂げようとしている十字架の死によって、多くの人に永遠の命が与えられるだろう」という意味です。麦の穂のデザインは、このキリストの言葉を思い起こさせます。

もちろんキリスト教のシンボルと言えば十字架。礼拝堂の座席の側面や、オルガンにも十字架のシンボルが使われています。

このヴォーリズ建築の空間を体験希望の方は、ぜひ礼拝にお越しください。